日本酒造りの職人から学ぶものづくりの仕事術

どうも、とてつもなく日本酒が好きです、サケザワです。
日本酒を飲むことも好きですが、それと同等に日本酒を造っている背景や職人のものづくりの姿勢に関心があります。昔放送されていたテレビ番組をDVDで見ることが出来たので、色々と感じた仕事の姿勢を語ってみたい。

日本酒づくりの最高峰、農口尚彦。

日本酒を造る職人集団の最高製造責任者を「杜氏」と呼ぶ
その杜氏の中でも、日本最高峰に居るのが農口尚彦氏です。
2010年に放送されたNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で農口尚彦氏を初めて知ることになった。「現代の名工」を認定、厚生労働大臣表彰、黄綬褒章の受章など77歳(放送当時)にして、日本酒造りの最前線に居続けている。ガッチリした肉体を見れば納得がいく。

毎晩、日本酒を飲んでいるが、日本酒造りの工程については全く知らなかった。自分は、飲んで「美味い」と味わうその背景に職人の魂と仕事観に惹かれたので、農口杜氏の言葉を中心に紹介してみよう。

「わからないからわかるようになる」

日本酒のアルコールは、麹菌という「菌」を発酵させることで作り出すことができる。
日本酒造りの工程において大事なのは、蒸した米に麹菌を付ける作業だ(麹作り)。菌を相手にしているので、お米によって菌のつき方が違う。最高の麹を造るには膨大なデータと長年の経験と勘が必要だという。

農口氏は「酒造りはわからない。わからんものとして始まらなかったら絶対につかみ取れない
これが、61年間も日本酒造りに携わっている男の言葉だ。

日本酒の主役は造り手でなくて、麹ということを知っている。かつて農口氏も20代の時には、日本酒造りは簡単だと豪語していたが、紆余曲折あって辿り着いた真実なんだろう。

仕事を61年もやっていると、全てを把握し、全てをコントロール出来るようになるもんかなと思ってしまうが、理解したいという欲求が常に持ち続けている。
77歳にしてこれほどの探究心があることに驚く。

「麹は生命。きちっと筋書き通りにいかない。」

麹を造る過程で、洗米の後にお米を水に漬ける(浸漬)という工程がある。
これは、この後の蒸した米が直接麹に関係するため、時間を計測しながら水に漬ける。
お米の状態や時間など28項目にわたって詳細なデータを30年以上毎日ノートに記載している。

このように、膨大なデータを蓄積しているが、勝負どころでは数値を超えた感覚が必要。

蒸した米に麹菌を着けていく作業をしていくが、麹菌を振る手の高さや歩く速度は経験と感覚が頼りであり、麹菌を振るう作業は、職人農口の真骨頂である。

目に見えない麹菌を自然界のものであると捉えて「麹は生命」と表現している。
生きているからこそ、筋書き通りにはいくことはないと言っている。

職人っていうイメージで全て感覚的な部分で仕事を進めていくんだろうなと思っていたが、積み上げたデータと経験から培われた感覚の両方共無いとやっていけないんだなと気づかされる。

「生き様が酒に出る」

日本酒の味を決定する最終段階で、農口氏は、共に働くお弟子さんに味の意見を求める。
「酒造りはわからない」から周りの意見を聞くという姿勢がある。人の意見に謙虚に耳を傾けているのだ。

インタビューにて日本酒造りで大切にしていることと聞かれた時
「麹菌、酵母菌に自分を合わせるという気分にならないといい酒はできないです。自分も、まるっきり正直にならなかったら受けてくれない。ごまかそうなんて事を考えたら絶対成功できないです。」
と述べていたが、本当が態度に現われており、全く偉ぶった様子を感じられない。慢心していない。隙が無いのだ

日本酒は、一夕一朝で知識や小手先のテクニックを身につけたものでは造れない。農口氏を慕って一緒に働いているお弟子さんも自分が生まれる前から日本酒を造っているので、追いつくことはできない。姿勢を学んでいるみたいなことを述べていた。

まとめ

杜氏がどのような仕事をしているかを知りたくて2、3度映像を見返したが、仕事というより「生き方」なのだなと考えさせられた。

日本酒の造り手は、

  • 謙虚でいること。
  • 素直であること。
  • 真面目であること。

これが、仕事の原点、生き方の原点なのだろう。

これほどまでに愚直に日本酒造りに向き合った潔さを垣間見ることができて自身の仕事の姿勢を正された。

追伸

日本にある酒蔵は、毎年30蔵無くなっているらしい。その理由として、お酒を造る半年は、家族と離れて酒蔵に住んで仲間と寝食を共にしていることや、24時間、お米の管理をしなくてはならない等。これらの過酷な仕事に跡継ぎも育っていない状況があるのだとか。そして、「杜氏」になったとしても、その責任の重さに自害する者もいるのだそう。

そんな命を削って造った日本酒を一滴まで感謝しつつ飲兵衛をしていこう!

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